🦌 酔っ払いがえずくような鳴き声――伊豆大島で大量繁殖するキョンの“現場”
リード文
「うぇぇぇぇ〜……」
まるで酔っ払いがえずいているような声が、夜の山あいにこだまする。
その正体は、人ではなく――“キョン”と呼ばれる小型のシカだ。
今、伊豆大島ではこのキョンの繁殖が深刻な問題となっている。
記者が実際に見て聞いた“現場”を追った。
■ 伊豆大島を覆う「謎の鳴き声」
地元住民のあいだで噂になっているのが、深夜の「奇妙な鳴き声」。
キョンは体長およそ70センチ、見た目は可愛らしいが、鳴くときは想像を超える。
「ギャー!」「グエッ!」――その声は、まるで酔っ払いがえずくようだという。
観光客が驚き、動画をSNSにアップすることも増えており、
“夜の伊豆大島名物”になりつつある。
■ もともとは観光施設から逃げ出した?
キョンは中国南部や台湾原産の動物。
かつて千葉県の観光施設で飼われていたものが逃げ出し、
房総半島や伊豆大島で野生化したとされる。
繁殖力が非常に強く、現在は島の至るところで姿が見られるように。
農作物への被害や生態系の乱れが深刻だ。
■ 駆除と共生のはざまで
東京都は駆除を進めているが、個体数の減少にはまだ時間がかかる。
一方で、SNSでは「かわいい」「保護してあげたい」という声も少なくない。
人と動物の共生をどう実現するか――伊豆大島はその課題を突きつけている。
■ 終わりに
暗闇の森に響く、あの“えずくような”声。
それは自然と人間社会のバランスが崩れた悲鳴にも聞こえる。
私たちが向き合うべきは、ただの「珍獣」ではなく、
人の手で生まれた“共存のゆがみ”なのかもしれない。


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